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農村を活性化させる為には?

大規模な農業形態は日本の自給率改善につながるのか?

大規模な農業形態は確かに“効率”が高いと言えますが、あくまでも“経済的効率”であり、持続的な自給率の改善や、自然環境との共生を考えると、むしろ危険もはらんでいるように思います。

////////引用開始////////
 農業生産の投入量と産出量を貨幣換算した上での経済学的な尺度でいえば、一つの農場が平均200haといった規模のアメリカの大規模農業は「効率的」で「生産性が高い」ということになるのです。しかし、熱学的な尺度による「エネルギー効率性」を見ると、アメリカ農業は世界でも最も「非効率」で、最も「生産性の悪い」、世界最悪の農業ということになります。

 現在、WTOの農業自由化によって、途上国で広く展開されている畜力農業が「非効率」のレッテルを貼られて淘汰されています。途上国は穀物自給率を低下させるとともに、米国などからの穀物輸入量を増やしています。途上国の側は、小規模農家の穀物生産が淘汰され、代わって前の記事の写真にあるようにアブラヤシ、コーヒー、ゴム、綿花、バナナ、コショウなどなど、輸出向け商品作物のモノカルチャー経営がますます興隆しているのです。競ってそれらを生産すればするほど供給過剰になって国際価格は下落するので、自給率を下げながら輸出作物を伸ばそうと頑張れば頑張るほど農業部門の貿易収支は悪化していき、米国で旱魃などが発生した場合の飢餓の危険性を高めるわけです。。
 熱力学的なメガネで見れば、エネルギー効率の非常に優れた畜力農業が、エネルギー効率が最悪の米国型機械農業に侵食され、地球生態系の破局と石油資源の枯渇を早めているだけということになるのです。

 熱力学的な観点に立つとどのようになるのか、例えば、『エントロピーの法則』(祥伝社)の著者として有名な米国の文明評論家ジェレミー・リフキンは、近著の『水素エコノミー』(柴田裕之訳、NHK出版)の中で次のように書いています。

<引用開始>
「熱力学の観点にたつと、近代的農業は歴史上もっとも生産効率の悪い農業形態ということになる。つまり、近代農業が一定のエネルギー量を産出するために投入するエネルギー量はこれまでのどの時代よりも多い。(人力と畜力のみに依存していた時代の)小農は通常1カロリーのエネルギー消費につき10カロリーのエネルギーを生み出す。これに対して、最新の技術を用いるアイオワ州の農場主は、人間の労働1カロリー当たり6000カロリーのエネルギーを生み出すことができる。とはいえ、この数字はエネルギーの純益を生み出すために使われるエネルギーの総量を計算すると、その輝きを失う。270カロリーのトウモロコシの缶詰一個を生産するために、農機具を動かし、合成肥料や農薬を与えることで2790カロリーが消費される。つまりアメリカのハイテク農場は、正味1カロリーのエネルギーを生産するために、10カロリー以上のエネルギーを使っているのだ。」
ジェレミー・リフキン著(柴田裕之訳)『水素エコノミー』(NHK出版、2003年、212頁)
<引用終わり>

 つまり、人力と畜力のみに依存していた農業はエネルギー投入1に対して10の産出をもたらしますが、米国農業は輸送や加工まで含めればエネルギー投入1に対して0.1の産出しかもたらさないわけです。米国型農業は、エネルギー収支で見れば、とてつもなく「非効率」で「生産性が悪い」のです。人間の労働力を省力化する代わりに、全てを石油ガブ飲みの機械で代替してきた結果です。

 石油の値段が安い限りにおいて、米国型農業が貨幣的な収支では「効率的」とされるわけですが、ピーク・オイルを迎えると言われる昨今にあっては、経済的な観点での「効率性」もいつまで続くか定かではありません。石油の値段が上昇を続ければ、遠からず人力・畜力農業の方が経済的にも効率的になる日がやってくるのです。

 生態学のメガネで見ても米国型農業は破綻しているといえます。フィリピンの写真にあるように小農経営の農地の境界には必ず林や茂みがあり、そこに鳥や昆虫などが多く生息しているので、それらは農地に害虫が発生した際にそれを食べる天敵として機能します。
 重機を導入し易くするために、米国型農業はそうした林や茂みを全て除去したので、天敵がいなくなりました。その結果、農薬散布量が増え、さらに害虫が農薬耐性を持つようになるので、農薬散布量をさらに増やす・・・・・というイタチごっこに帰結したのです。このイタチごっこの最終形態が、毒素を分泌する殺虫成分を作物の遺伝子に埋め込んで害虫を駆除するという、殺虫性遺伝子組み換え作物の登場なのでした。

 さらに水循環を無視した地下水の大量汲み上げも米国農業の「持続不可能性」を保証しています。ネブラスカ、カンザス、オクラホマ、テキサスなどの米国の西部穀倉地帯の農業は、オガララ帯水層という化石水を汲み上げることによって成立しているのですが、オガララ帯水層の化石水は既にかつての半分程度にまで減少しており、もう20年ほどで枯渇に直面すると言われています。

<なぜ小規模自作農家を守らねばならないのか? ②>「代替案」より
////////引用終了////////

市場原理においては、大規模な農業形態によって生産されるローコストな農作物は競争力があります。
しかし、廉価な石油がふんだんに使えると前提があってのことですし、自然のサイクルから逸脱した様式であるため、長期的には自然環境を破壊していきます。

市場原理に乗っかったままでは、仮に日本の農業を大規模化しても、他国がより大規模な形態で廉価に供給すれば、結局そちらを選択してしまい、自給率の改善は思ったほど進まないのではないでしょうか。

日本が自給率を改善していくにためには、国内農業に力を入れていくことと合わせて、市場原理から脱却することが必要なのだと思います。

西村秀彦
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