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穀物の中で、米は生産性が抜群です。モミが一粒まかれると、秋には500~700粒に増えるといわれています。米と麦を単位面積で比較すると、米は麦の約2倍の収穫を得ることができます。そのため、多くの人口を養うことができます。
そのうえに、米は栄養的に素晴らしい食品です。米はでんぷん質が75%、タンパク質が7%含まれ、更にビタミンB1・B2や鉄分や食物繊維なども含まれています。これらの栄養素は、精米や調理法によって減少しますが、他の食材に比べ大変栄養価が高いといえます。
そこで、米を主食とした民族は、こうした米の特長を生かした食文化を発達させています。
我が国では、米を中心として、「ご飯とおかず」という方式の食事法を取っています。米をカロリー源として、米の吸収を早め、栄養を補うために副食をとります。副食類には、米の吸収を早めるために、一種の触媒的なアルカリ食品を、さらにミネラル、ビタミン類を補給する食品を、少量摂取しています。これは、実は合理的な食事法だといえます。
白米の場合、主な欠点を挙げると、まず酸性食品であることがあります。次に完全無塩食品であることがあります。また、米をカロリー源としたために、タンパク質や脂肪、ミネラル、ビタミン類の摂取が少なくなりがちです。そこで副食類は、その3点を補うことに集中されます。
第一に、酸性の中和剤として、日本人は梅干、味噌、漬物などの発酵食品を摂ります。特に素晴らしい発明品が、梅干です。梅干は、米の酸性を中和し、食べた米のカロリーのほとんどが吸収される役割を果たします。「日の丸弁当」といって、ご飯の真中に梅干が一粒という弁当がありますが、実はこの梅干が日本人のパワーの秘訣だったのです。
第二に、米の澱粉は完全無塩食品ですから、塩分をいかに摂取するかが課題となります。塩は、空気に触れるとすぐ品質が変化します。そこで、日本人は、塩を空気に触れさせない方法を考え出しました。それが、他の動物の蛋白や繊維の中に塩を入れておくという方法です。この発想が、味噌、醤油、漬物が発達した原点です。味噌、醤油、漬物の中に塩を入れると、そのもの自体の発酵がそこで止まるという働きがあります。それと同時に、塩が空気に触れないから半永久的に保存されるのです。
特に味噌は、傑作です。味噌は米と一緒に食べると、味噌のおかげで、米の酸性が中和され、カロリーがほとんど吸収されるだけでなく、栄養素が体の中に入ってから変質して、大切なアミノ酸に化すのです。ご飯に味噌汁という組み合わせが、日本食の基本です。
第三に、さまざまな栄養素を補うために、日本人は魚類や大豆食品(豆腐、納豆など)、根菜類、海草類などを副食に摂ります。これらは低脂肪で食物繊維、ビタミン、ミネラルの豊富な栄養バランスの良い食事です。
米を中心に組み立てられた日本食は、科学的に見ても非常に優れた食事であることがわかっています。そこには、豊かな先祖の智恵が盛り込まれているのです。
日本食は、世界で最も健康に良い食事であると評価されています。私たちは世界に誇る食文化を有する国民です。理に適った日本食を見直す時ではないでしょうか
マリー
