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農村を活性化させる為には?

若者を巻き込み地域で起業、農業にも挑戦する旅館の女将!

みんなの農業広場 農業経営者の横顔より転載

書籍:週末は若女将―「楽しい」を仕事にする私たちの挑戦
山根多恵さん(島根県大田市・吉田屋)

 島根県温泉津(ゆのつ)は、島根県の中央にある歴史ある温泉街である。「東京からJRで一番遠い街と言われているそうです。午後9時にはあたりが真っ暗で、移り住んだ当初は、びっくりしました!」と、20代にして、起業支援団体の大阪支部責任者から女将に転身、今や農業にも活動の場を広げている山根多恵さん(26)。


女将を引き受けたのは偶然

 非農家出身の山根さんは、山口大学に在学中、山口市で起業支援に関わったことがきっかけで、卒業前から大阪で起業支援センターの立ち上げと運営に参画。社会人2年目に恩師から誘いを受け、厚生労働省の雇用創出促進協議会推進本部スタッフとして、島根県大田市に派遣された。

 温泉津は1300年の歴史を持つ温泉だが、高齢化率全国一の島根県の中でも高齢化率42%と高いところだ。そんな地域の雇用創出に取りくもうと、住民に何が問題なのか聞いて回ったところ、100年近く続いている老舗旅館を経営する老夫婦に出会い、後継者にと望まれた。


 「女将になりたくて、なったわけではありません。でも、責任をもてる事業をやりたかったし、自分で作り上げる仕事がしたいと考えていたので、やってみようかと。だから女将は“手段”ですね」

 女将修行はほとんどしていない。先代の女将と1カ月一緒に生活を共にし、やり方をマニュアル化した。


 従業員には、それまでの人脈や知り合った若者を“一本釣り”した。山根さんは、地域に若者がいることで、地域が活性化し、地域の問題を解決することができるようになると考えている。

 2006年1月に引き継いだ旅館は、「高齢化の街に若い女将さんがやってきた」と注目されて大繁盛。廃業の危機どころか、売り上げは倍増した。地域からは、必ずしも好意の目ばかりではなかったが、若者が街に増え、実績を積み、注目される存在になった。


週休4日の旅館営業?!

 2006年7月に、山根さんは旅館営業をなんと「週休4日」に短縮したのだった。営業は、毎週金、土、日の3日のみ! なぜなのか。

 「儲かるのはうれしいこと。でも、売り上げや収益が上がるにつれて、スタッフが疲れ、笑顔がなくなってきたんです。そうなると、面白いアイデアも生まれてこなくなります」忙しくなるとルーティンワークだけが仕事であると勘違いし、新しい仕事をしなくなるのは人の常。だから、週休4日にすることで、稼ぐ日と考える日を分けることにした。

 旅館休業日=地域貢献日には、「地域や地域を支える人たちのためになる」活動のアイデア出しや、活動そのものをおこなっている。生まれてきたのが、石見銀山での竹刈りツアーや地域の老人訪問、遊休農地の活性化、もったいない運送などユニークな取り組みの数々だ。


農業のおもしろい形をつくろう

 「もったいない運送」のきっかけは、知人から「夏みかんの収穫ができず、腐りそうだ」と聞き、スタッフを送って収穫した夏みかんを旅館の風呂に浮かべて好評だったこと。これをヒントに、受け取る人がガソリン代を払って、誰かの不要品を欲しい人につなぐ形ができあがった。

   


 竹刈りツアーは、手入れ不足で厄介者になった竹を、お金を払ってやってくる人に刈ってもらう。人手の確保のみならず、人件費もいらない。刈った竹は竹炭や花瓶などに加工して売れば利益を生む、というしくみだ。

 遊休農地では、そば体験(3コース:そば播き、そば刈り、蕎麦打ち)をすることができる。3コースとも体験した地元の子供達が、「NOLO(※1)のそば指導者認定」を受けている。そば体験を希望する人に、この子供たちが先生になって教える、ということもありそうだ。また、ブルーベリー栽培も順調で、ゆくゆくは、特産化や地元住民の雇用につなげたいと考えている。「産官学‘農’連携です」と山根さんは笑う。

 隣の山口県では、ミュージシャン志望の若者二人が、音楽活動以外の日に廃園になりそうだった茶畑の管理に取り組もうとしている例もある。


自由な発想が地域を再生する

 若者たちは、外からの客や地域の住民と接して会話をする中で、ヒントをつかみ、自ら提案するようになる。地域の資源を生かして地域の問題解決をはかり、仕事を作り出すことで、呼び込んだ若い力を地域にとどめ、そして生かす、両者が満足するしくみができつつある。よそ者を拒みやすい地域住民も、興味半分、期待半分のまなざしに変わってきた。

 山根さんは、経営から生まれる利益を、地域貢献、先行投資、ボーナスに3分の1ずつ振り分けている。明日につながる素敵な使い方といえよう。

 「30年後を考えよう!」を合い言葉に、次々に生まれる新しい事業と、若い力と知恵とが、温泉津を、島根を、どう変えていくのか。これからも目が離せそうにない。(水越園子 平成19年12月18日取材 田舎起業セミナーにて/WWBジャパン主催)

※1 NOLO
吉田屋、東出雲町、島根大学が産官学民連携で2006年3月に設立した農業法人。


●旅館「吉田屋」 ホームページ




芝田琢也
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