FC2ブログ

農村を活性化させる為には?

『食と農と環境をつなぐ』 蔦谷栄一 著

■平成20年11月10日刊行。
著者が農林中金総合研究所に勤めながら雑誌・新聞等に寄稿したコラムを一冊にまとめたものです。その時々の情勢、見方、主張等をそれなりの思いを込めて書いた著者の高い見識の文意は、読む者をうなずかせます。仕事柄数多くの生産現場の方々に出会い、また毎週末には山梨県にある菜園で過ごし、地域の方々とつきあい、そこで農業体験塾を主宰し農村と都市との交流を仲立ちしてきた、まさに「食と農と環境」を現場で見聞きし考えを実践しています。

本書は、食と農と環境の現状を鋭く見つめ、これからのあり方を示唆しています。わかりやすく、読む者を引き込み、一気に読めます。農業者や消費者はもとより地域リーダーとして農業委員、行政関係者必読の書です。

●ポイント
◇筆者の日本の農業に対する基本的な考え方(はしがきより)
農業は産業であると同時に、生業であり営みであり、暮らしと不可分一体となったものである。そして農業は“自然”に全面的に立脚しており、不合理で、人間の力では如何ともしがたい生命を土台とする生命産業であると同時に、多面的機能をも担っている。その意味で農業は、市場原理の世界と自給・非市場価値の世界の両面を有しており、市場原理の世界とバランスをとっていくことが不可欠ではある。

しかしながら非市場価値の世界と切り離された農業は本来の農業ではあり得ず、農産物は単なる商品と化し、工業生産、工場労働による産業でしかない。そして農業は次第に市場原理の世界に席巻されて単なる産業となるにしたがって、人間が人間らしく生きていくために不可欠な家族・地域・自然等との関係性を崩壊させ、
人間世界のみならず生物世界も含めて持続性・多様性を喪失させてきた。

これからの日本農業は、①豊富な地域性・多様性、②きわめて水準の高い農業技術、③高所得かつ安全・安心に敏感な大量の消費者の存在、④都市と農村のきわめて近い時間距離、⑤里地・里山・棚田等の優れた景観、⑥豊かな森と海、そして水の存在、等の豊富な地域資源を生かした、地域社会農業を目指すべきであろう。

◇あらためて強調しておきたいこと
1.穀物価格の高騰、食糧自給率逼迫・不安定化は来るべきものが来たということであり、もはや食糧自給率の向上、食糧安全保障確保についての百の説教よりも、早急に米粉、飼料イネ、飼料米のための非主食用米生産増強による水田農業の再編を行うべきであって、そのためには再生産を保証する「水田維持直接支払い」の導入が不可欠となる。

2.担い手の高齢化、限界集落化、遊休農地等も増加など、担い手は絶対的不足状況いあり、専業農家だけでなく兼業農家、自給的農家も欠かすことのできない貴重な担い手である。多様な担い手を前提としながら、農地を集積していくメリットを創出していくことが必要である。

3.食と農のもつコミュニケーション能力の偉大さを再認識し、多少なりとも国民すべてが農との関わりを持つことが出来るようにしていくことが必要である。人間が求める豊かさは、物から、人と人とのつながり、コミュニケーションへと移りつつある。

4.子供たちにとって食農体験はきわめて重要であり、こうした機会を日常レベルでもっともっと体験させていく必要がある。手や体を使い、自然に触れ、戯れることによって、はじめて生きていく力、コミュニケーション能力を獲得していくことも可能となる。次代を担う子供たちがまっとうに育ってくれるかどうかは、日本の将来の国力・水準そのものに直結する。

5.海外から日本を見ることも重要である。日本の常識は必ずしも世界の常識ではなく、むしろ非常識であることも多い。WTOの世界とはいえ、いずれの国の家族経営農業者も、暮らし、地域を大事にしていることに変わりはなく、家族農業経営者どうしは相互に置かれている状況について理解しあうことは可能であることを実感している。



小松由布樹
スポンサーサイト





にほんブログ村 企業ブログ 農業へ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://gensenkeijiban4.blog.fc2.com/tb.php/332-c8845a43
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)